フライパンのコーティングについて「耐摩耗試験○○回クリア」とは?
フライパンのコーティングで「耐摩耗試験○○万回クリアで耐久性に優れています」というキャッチコピーを目にしたことはありませんか?この回数表示が多ければ多いほどなんだか高性能な気がしますよね。
でも回数表示だけで選ぶと使ってみてガッカリという事も…。そんなことにならないよう、今回は回数表示のキャッチコピーだけでは解りにくいコーティング(ふっ素樹脂)の特徴と、表示の意味と用途によって選んだ方が良いふっ素樹脂についてお話します。
目次
そもそも耐摩耗試験ってなに?
耐摩耗試験は、店頭で商品についているラベルやテレビなどの通販番組などでも回数部分ばかりが強調されてしまい、実際にどういう試験なのかが良く分からないと思われます。耐摩耗試験がどういうものなのかをご説明します。
公的に定められている規格である。
フライパンには様々な試験項目があり、その中のふっ素樹脂の性能を示す項目の中の一つが「耐摩耗試験」です。
JIS規格というのをご存知でしょうか?
JIS規格は正式には日本工業規格と言い、日本で売られている商品の細かな部分まで性能や検査の仕方などが取り決められています。耐摩耗試験はこのJISの「アルミニウム製調理器具」という規格を基に作られています。
耐摩耗試験は実際の使用に近く更に過酷な形で行われる。
今回は耐摩耗試験についてなのでその他の試験は省きますが、JISでは実使用を想定した様々な試験が設定されており、メーカーはそれに準じて製品を作っています。
耐摩耗試験は
- 専用の試験機でフライパン調理面の温度を200℃に保持する。
- その状態で金属製のへらで力をかけながら、前後に決まった距離をこすり続ける。
- 既定の回数こすった後、コーティングの下地が見えていないかどうかを確認する。
という、実際にフライパンを使用している時に近い形ながら過酷な状況で行われます。
JISの試験では1往復を1回として、3,000回を摺動(しゅうどう=動かすこと)させたときに下地が見えていないことが合格のラインと定められています。
実際の耐摩耗試験の様子
「あれ?」と皆さん思われましたか?
そうなんです、公的に定められた耐摩耗試験は3,000回の摺動に耐えれば合格となります。その為「耐摩耗試験10万回クリア」とうたっているコーティングは、試験の合格基準よりずっと耐久回数が高いものとなります。
- 耐摩耗試験100,000回(10万回)クリア ・・・・・・JIS規格の約33倍
- 耐摩耗試験500,000回(50万回)クリア ・・・・・・JIS規格の約166倍
にあたります。まさに「ケタ違い」の耐久回数ですね。
年々進化している「耐摩耗剤」が配合されている
耐久性を上げるためにフライパンメーカーは様々な試みを常時行っています。調理や洗浄によってコーティングが削れて行くの保護するため、コーティングに「耐摩耗剤」と呼ばれるものをブレンドしています。
耐摩耗剤としてセラミックス(磁器系)の極微粒子粉末をコーティングにブレンドする事から始まり、現在は人工ダイヤモンドを微粒子化したものをブレンドしたコーティングがダイヤモンドコートという名称で一般的になっています。いずれも下地塗りとなるベースコートに混入されており、ブレンドされた粒子の突起がヘラ等からの摩耗を防止してくれる役割を担っています。
耐摩耗剤が配合されたものは耐久性が極めて高く良い事だらけのような気もしますが、微粒子とはいえ粉状のモノが配合されているので、表面に細かな凹凸ができ、ちょっとザラついた感じが出るものが多い傾向です。
現在一般的な
ダイヤモンドコートの例
耐摩耗剤配合のコーティングは
触ると表面に少しザラつきがあります
- 公的に定められている規格である。
- 実使用に近しい条件で行われる試験である。
- 耐摩耗剤の進化で、コーティングの耐久回数が飛躍的に延長されている。
自分の用途に合ったふっ素樹脂を選びましょう
耐摩耗回数が多い程耐久性が高いふっ素樹脂であることは間違いないですが、回数が多いからといって「表面がツルツル」であるとは言えず、また回数が多いからどんな料理にも向いているという訳でもありません。
それなら何を基準に選べばいいの? という疑問にお答えいたします。
よく作る料理で選ぶのがおすすめです
ご家庭でよく作る料理を思い浮かべてください、もしガッツリ系で比較的油をよく使われる炒め物の比率が多い場合は「耐摩耗回数が多いコーティング」のフライパンを選ばれたほうが長持ちします。
耐摩耗剤の効果で、食材や道具がふっ素の表面を保護してくれるのでガシガシと中のモノを動かしても大丈夫。
ただ、凹凸が多いので油を薄く引いていただかないと、その凹凸に引っかかり滑りが悪くなる場合があります。
パンケーキや脂身の少ないお肉等を比較的じっくりと焼くことが多い方はむしろ「耐摩耗回数は気にしない」ことをお勧めします。フライパン表面を手で触ってみてザラザラっぼさが無いものを選んでください。
フライパンメーカーとしてはお勧めしませんが、パンケーキなどは油を引かずに焼いた方が焼き色がきれいにつきます。耐摩耗回数が多くザラつきがある表面だと生地がフライパン表面に喰いつき離れにくくなります。
炒め物をよくするのなら
耐摩耗回数が多いものがおすすめです
じっくり焼く料理をよくするのなら
フライパン表面のザラつきが無いものがおすすめです
火力は中火以下で使用して下さい
昨今のガスを含めた熱源器具はとてもパワーがあり、皆さんが中火で使っていると思っていたものが実はフライパンにとっては強火だったという事は多々あります。中火とはフライパン底面から炎がはみ出さない程度の火力のことで、器具の火力つまみの中の位置にする事ではありませんので、ご注意ください。
強すぎて底面からはみ出した炎の熱エネルギーは空気中に分散してしまい、フライパン等に伝わる熱エネルギーは半分以下です。炎がはみ出す事によってフライパン側面などに熱がかかり過ぎたり、強火で一部に熱を与えすぎると部分的にふっ素樹脂が傷んでしまい食材がくっつきやすくなります。フライパン底面から炎がはみ出さない程度の火力でお使い下さい。
お手入れの際に、食器用スポンジのザラザラした面は使わない様にして下さい。
ザラザラした面でフライパンをこすっても滑る様な感覚があるので影響が無いと思われがちですが、実際は表面のコーティングを削って寿命を縮めています。くっついたガンコな汚れはぬるま湯に浸して柔らかくして取り除いて頂くと、表面のコーティングが傷まずに長くお使い頂けます。
フライパン底面から炎がはみ出さない
中火で調理して下さい
洗う際は食器用スポンジの
ザラザラした面側は使わないで下さい
- ふっ素樹脂は高耐熱のプラスチック被膜です。過度に温度を上げると表面が柔らかくなって性能を発揮できなくなってきます。火力調節をこまめにして中火程度で調理をする事を心掛けて頂ければ長くお使いただけます。
- ダイヤモンドコートに代表される「耐摩耗剤入り」のふっ素樹脂は、滑り性だけを見ると何も入っていないふっ素樹脂にかなわない場合があることは覚えておきましょう。
和平フレイズのおすすめフライパン
BRONANO(ブラナーノ)
内面に耐摩耗回数が多い「ダイヤモンドコート」を採用したフライパンです。油を使う炒め物をよく作る方におすすめです。
ufufu(うふふ)フライパン
内面のザラつきが少なく、じっくりと焼く料理を作ることが多い方におすすめです。内面に引いた油が中央にとどまりやすい形状なのもポイント。
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