フライパンの真ん中が盛り上がっている理由
「最近売っているフライパンって真ん中盛り上がってない?」とお思いになったお客様も多いかもしれません。ふっ素樹脂加工だから本当は油使いたくないんだけど、それはダメ!って取扱説明書に書いてあるから、仕方なく薄く油を引くんだけど、ぜーーーーーーんぶ周囲に流れてしまい、調理の役に立たない!と、至極ごもっともなお叱りを受けることも少なくありません。
ですが実は、フライパンの中央が盛り上がっているのにはちゃんと理由があります。今回はその理由についてのご説明と、盛り上がりが少ないフライパンをご紹介いたします。
- 中央が内側に盛り上がっている理由
- メーカーとして何か対策していないの?
目次
フライパンの中央はなんで盛り上がっているの?
「金属製のフライパンの中央が山なりに盛り上がっているなんて、考えたこともなかった」という方も少なくないはずです。平面であってほしい調理面ですが、新品の状態からわずかながら盛り上がっているのには理由がちゃんとあるのです。
異種金属の組み合わせが要因のひとつ
フライパンは加工のしやすさとふっ素樹脂のノリの良さなどから「アルミニウム合金」が使用される事が多いです。このアルミニウム合金は原則IHクッキングヒーターに反応しない※ため、熱くなりません。それをIHに使えるように、反応する金属と組み合わせます。(参照「IH対応のフライパンや鍋はガス火で使えますか?」)
※ IHクッキングヒーターの方でハイパワーで反応をさせる機種もあります。
IHに対応させるために
異種金属を組み合わせています
この合体させる金属の多くは磁石につくタイプのステンレス鋼というものが使われています。
多くの物質は素材自らの防衛として熱を持つと膨張、冷えた際は収縮して温度衝撃による破壊を防止しています。これらを熱膨張・熱収縮といい、膨張率という数値で表されます。この膨張率がアルミニウムとステンレスで異なる事が、フライパンの底が盛り上がる原因のひとつです。
膨張率数値は省きますが、よーいドン!で同時加熱すると、同じ時間でステンレスの2倍くらいアルミが余計に膨らむイメージです。ぴったりと隣り合った片方が倍膨らんだら、膨らみの小さい方は押し出されてしまいますよね。
あえて最終工程で内側に盛り上げている
フライパンの製造工程ではふっ素樹脂を内側に塗装して焼き付け、その後外側に色を塗って焼き付けと、フライパン本体を300度以上の焼成炉(オーブン)に一時間近く出し入れします。その間にフライパン本体は膨張・収縮を繰り返し、最後に焼成炉から出て来た時は外側に膨らんでいます。
最後に焼成炉から出て来た時は外側に膨らんでいる
そこで、最終の段階でこの膨らんだ部分をプレス機で押し込む事によって底を平らにするのですが、一旦膨らんでしまった本体には「膨らみ癖」のようなものがついており、実際の調理の際に200~250度程度の熱が加わると、どうしても外側に膨らんでしまいます。そこで、あえて少し内側に押し込むことで、調理時に外側にふくらむのを防止しています。
底を少し内側に押し込む事によって
調理時に外側に膨らむのを防止しています。
内側に盛り上げずに作るとどうなるのか
最後に内側に盛り上げずに作ると、フライパンは外側に盛り上がった状態になります。この状態だとIHクッキングヒーターやテーブルの上といった、平らなところに置いた際コマのようにくるくると回ってしまい、使いにくい上に調理時危険な状態となってしまいます。
外側に盛り上がったフライパンはこの様に
くるくると回ってしまいます。
内側に盛り上がっていると使いにくい!対策はしていないの?
「中央が盛り上がってるフライパンは使いにくい」という声にお答えした、盛り上がり対策をしたフライパンや、盛り上がりの少ないフライパンの選び方をご紹介します。
材質の研究は常時行っている、しかし…
もちろんメーカーとしてはより快適にお使いいただくために様々な材質の研究を行っていますが、フライパン本体に適した素材は現在のところ、鉄またはアルミニウム合金となっています。
さらに、軽量でかつ利便性の高いふっ素樹脂加工を施すとなると、アルミニウムがベストです。IHに適応させるための材質も鉄を含む有磁性金属で各種研究していますが加工のしやすさや入手のしやすさ、またはリサイクルの観点から主流はステンレス鋼となっています。残念ながら今すぐにフライパンの材質を盛り上がりにくいものに変えるというのは、難しいのが実情です。
形状で改善できないかを考えている
素材がこうだから、という言い訳ばかりをしているわけにもいきませんし、何より実際にお困りのユーザー様に申し訳ないという気持ちはいつも持っていますので、素材の欠点をカバーするための研究は常に行っています。
その中で生まれた一つの結論がうふふフライパンです。フライパンの底面を特殊加工する事で、内面に引いた油が中央にとどまりやすい形状を作り出しています。
うふふフライパンは内面に引いた油が
中央にとどまりやすい形状をしています
一般のフライパンより製造工程が複雑で材料費もかかるため決して安価なフライパンではないですが、耐久性にも優れておりより快適な使い心地を長期にご体感頂けるのではないかと思います。
盛り上がりが小さいフライパンが欲しい際に見るべきポイント
IH対応フライパンの中でも、「一体成型の商品(ダイカスト・鋳物)であるもの」「底の部分にステンレスの打ち込み面が見えておらず塗装が施されているもの」は、盛り上がりが抑えられるように調整されている商品が多い傾向です。
また、時代と逆行するようですが「軽量」とうたっていない商品は比較的底面が厚く作られており、熱による膨張の影響を受けにくくなっています。
底面にステンレス板が見えないIH対応フライパンは
盛り上がりが抑えられている傾向があります
- IH(対応)と記入されているステンレスが打ち込まれたフライパンは、内側に多少の盛り上がりがある。
- 特に軽量を特徴としている商品は軽量化のためにギリギリまで厚みを調整しているため、内側の盛り上がりが出やすい傾向にある。
- 一体成型の商品(ダイカスト・鋳物)で、比較的重量があるものは内側の盛り上がりが少ない傾向である。
和平フレイズおすすめのフライパン
ufufu(うふふ)フライパン
底面中央の盛り上がりが無く、内面に引いた油が中央にとどまりやすい形状のフライパンです。
エヌトーン
熱ムラが少なく変形に強いアルミダイカスト製。そのまま食卓へ出しても映える、おしゃれなフライパンです。
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