鉄鍋で鉄分は取れるのか?
鉄瓶で湯を沸かすとお湯がまろやかになるのは鉄分が溶け出しているから、と言われています。味覚については人それぞれなので、何とも言えないところですが、材質が鉄であれば使用を繰り返すことで、調理物に鉄分が溶け出す事は間違いありません。鉄瓶も鉄鍋も同じ鉄材ですから「鉄鍋調理は鉄分摂取ができる」「鉄分不足の方は鉄鍋を使って鉄分吸収!!」のようなキャッチコピーをよく見かけますが、実際の所はどうなのか?
当社は今まで鉄分が取れるといった優位性をうたう販売はしていませんでしたが、「鉄鍋で鉄分が取れる」は事実なのかはたまた幻想であるのか? 実際に試す事に不安もありますが、メーカーとして真実を知っておくべきである!という事で、今回禁断(?)の実験を実施したので、その内容をレポートします。
目次
鉄分って1日にどれくらい取るとよいの?
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、1日の食事から鉄を摂取する量は成人男性では7.5mg、月経のある女性では10.5mg(月経のない女性:6.5mg)が推奨されています。食品の種類によって体に吸収されやすい「ヘム鉄」というものと「非ヘム鉄」という物があり、それらを合わせて食品の鉄分から体内に吸収されるのは15%程度と言われています。
それに基づき、1日に必要な鉄分を食品だけで摂取しようとすると、ほうれん草450g(15~20株)、よく見かける3個パックの納豆(1パック50gのもの)だと6パックとなります。相当ほうれん草好き、納豆好きでも毎日はつらい量ですね。
鉄鍋に問う!本当に鉄は溶け出ているのか?
さて、実験を開始します。まずは、今回鉄鍋として用意したのは当社イチオシのenzo(エンゾウ)中華鍋22cm、鉄鍋なのに軽量で使いやすく槌目模様やハンドルの美しさが人気の商品です。
鉄鍋だけだと不公平、「普通の鍋でも鉄分は出るんじゃないの?」と思ってしまいます。そこで比較対象として、似たサイズのふっ素樹脂加工が施された一般的ないため鍋も用意しました。
まずは薬局等で売っている不純物が含まれていない水「純水」をそれぞれの鍋の中に同分量入れて3分間沸騰させました。
それぞれの鍋に純水を入れて3分間沸騰させます。
2つの鍋は容量がほぼ同じなので、沸騰までの時間もほぼ同じでした。お鍋自体の内面の色の違いはありますが、沸騰中に特に目で見える違いはありません。匂いなども特に差は感じませんでした。
沸騰中に特に目で見える違いはありませんでした。
沸かしたお湯を透明なPETボトルに入れてみます、微妙ではありますが、左のenzo中華鍋(鉄鍋)で沸かしたものの方がうっすらと色づいているように見えます。ふっ素樹脂加工のいため鍋で沸かしたものは、無色透明のまま変化がないようです。差が出たという事は、何か違いはありそうですが…
鉄鍋で沸かしたお湯はうっすらと色づいているように見えます。
仮に違いが出たとしても、鉄瓶と異なり鍋でお湯だけ沸かして飲むなんてことはまずないでしょう。この実験でたとえ差が出たとしてもそれは実際の調理とは異なる「試験のための試験」で皆さんが知りたいことではないと考えました。
料理を作って確認する
作る料理によって鉄分の溶け出し方も変わると思われますので、「鉄鍋で調理したら鉄分が○○mg出ます」という数値は出せませんが、先の純水の実験のように、同一の食材で同一分量の料理を作った際に、鉄鍋とふっ素樹脂加工の鍋で鉄分の含有量に差が出るのか?という事はわかりそう…です。
鉄が溶け出しやすい条件としては塩分と酸が含まれている物のため、今回は中華鍋という事もあり「エビチリ」をチョイスしてみました。用意した材料はこちら。
- エビのむき身
- ネギ
- チリソース
- ニンニク
- 唐辛子
- 片栗粉
使用している食材にも鉄分は含まれているため、調理を行った物を分析すると確実に鉄分が検出されるはずですが、それが鉄鍋とふっ素樹脂加工の鍋で差が出るのか否か。
調理中に特に目で見える違いはありませんでした。
調理中も調理後も差は全く分かりません。食べ比べてみたかったのですが、できるだけそのままの状態で分析したかったので、残念ながら指をくわえて見るだけにしておきます。
調理後にも特に目で見える違いはありませんでした。
さあ! 分析だ!
客観的な結果を得るため、第三者機関である一般社団法人 県央研究所様に、煮沸後の純水と調理物に鉄分がどのくらい含まれているかの分析を依頼しました。分析にかかる時間はおよそ5日間、さて結果は…
一般社団法人 県央研究所様に分析を依頼しました。
沸かしたお湯の分析結果
結果から先に言うと、鉄分は確かに出ました。それも明確に。結果が面白い数値になっているので、すこし詳しく説明していきます。まず、純水を使用して沸かしたお湯の分析結果がこちらです。
検体名 | 鉄 | |
---|---|---|
試験品 | enzo鉄中華鍋(22cm) | 0.05mg/100mL |
比較品 | ふっ素樹脂加工炒め鍋(22cm) | 検出せず(定量下限 0.01mg/100mL) |
※依頼者が調製した試料で検査実施
鉄鍋で沸かしたお湯には100mL中に0.05mgの鉄分が認められました。対するふっ素樹脂加工の鍋で沸かしたお湯では鉄分は検出されませんでした。つまり、鉄鍋で沸かしたお湯の中には鉄分が出ているという事です。逆にふっ素樹脂は非常に安定した物質なので、沸かしたお湯の中には何も出ないという事が改めて分かります。
ただし冒頭で触れたように、成人男性の一日鉄分推奨摂取量は7.5mg。この白湯だけで推奨摂取量を取ろうとすると、15リットル飲まないとダメってことになりますね(笑)
調理物の分析結果
次に、調理物(エビチリ)の分析結果を見てみましょう、エビチリの食材にも鉄分が含まれているので、ふっ素樹脂加工の鍋で調理したものからも鉄分が検出されるはずですが、果たして結果は…
検体名 | 鉄 | |
---|---|---|
試験品 | enzo鉄中華鍋(22cm) | 5.7mg/100g |
比較品 | ふっ素樹脂加工炒め鍋(22cm) | 0.2mg/100g |
※依頼者が調製した試料で検査実施
どびっくり!!食材に含まれている鉄分は100gあたり0.2mgなのに対して、鉄鍋で調理したものは5.7mg。比率で言うと28.5倍!!とんでもない差が出ました。単純に引き算をすると鉄鍋から5.5mgも鉄分が調理物に溶け出ていることになります。試験の結果から、鉄鍋で作ったエビチリを150g食べると成人男性一日分の鉄分が取れちゃう事になるのが分かりました。
鉄鍋すげぇ! こいつは今夜も、鉄分のためにキンキンに冷えたビールとエビチリで乾杯だ!!
和平フレイズがおすすめする鉄鍋のご紹介
記事内で使用した、和平フレイズおすすめの鉄鍋をご紹介します。
enzo(エンゾウ) 鉄中華鍋
軽くて扱いやすい鉄の中華鍋。火力が命と言われる炒め料理には、加熱に強い鉄材料が最適ですが、重いのが難点。そこで、従来とは異なる加工方法や昔ながらの製法などで試作を繰り返し、本製品にたどり着きました。
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